思わぬ時にけがをしたり、ふとした時に病気に気づくものです。しかも入院となれば大変です!突然の入院生活についてどのように過ごしたのか、周りの方々に聞きました。

・お風呂に入っていて気づいた鼠径ヘルニア

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5歳の時、お風呂に入れてもらった際に父親は私の身体に異変を感じたようです。体を調べてみると、鼠経部の筋膜の隙間から内臓らしきものが皮下に突き出てしまっていました。飛び出したモノを手で押し込めたり横になって眠ったりすると内臓は引っ込み、お腹の中に戻って行きました。その時私自身は痛みを感じませんでした。しかしこれはおかしいと感じた父親に病院に連れていかれ、検査をしてもらったところ鼠径ヘルニアであることが発覚しました。

病院に行った際は血液検査、超音波検査、CT検査などを行われました。一通りの検査が終わり医師から説明を受けました。鼠径ヘルニアは成人になると自然に治ることはなく、放っておくと痛みを伴ったり傷が大きくなることで手術が困難になってしまう、最悪の場合は圧迫されることで腸が懐死してしまう場合があると説明されました。手術では脱出した内臓をお腹の中に戻し、腹壁の孔をふさぎます。すぐに手術をした方がいいということで私は5歳にして人生初の「入院」というものを経験しました。

入院中はずっと不快な気分で過ごしていました。痛いのは嫌いだし他の人と相部屋で落ち着けません。それまで一人っ子でわがまま放題してきた私にとっては苦痛な時間でした。私の病院嫌いはこのときの入院経験が原因だと思います。一方で、これまで幼稚園と家の中しか世界を知らなかった私が、病院という違う世界を知ることのできた貴重な体験の瞬間でもありました。私と同じくらいの年齢でもっと重い病気にかかって入院している子、学校に通えず治療をしている子、色んな人がいるけど皆 弱音も吐かず病気と闘っていました。

私は人見知りで無愛想な子供だったのですが構わず明るく話しかけられました。短い間でしたが話す仲間もできました。入院中は、世の中には色んな人がいて色んな人生があることを知りました。学校に行けること、健康であること、外で元気に遊び回れること、家族と家で一緒に暮らせることは当たり前のことじゃないんだとカルチャーショックを受けました。一週間ほどで退院したのですが、自宅のベッドで眠れた時のほっとした気持ちはいまだに鮮明に覚えています。母の作ったごはんのおいしかったことや、ケーキを父が退院祝いで買って来てくれたことなど、も思い出します。

入院中、怖かったこと、困ったことは3つあります。1つ目は病院食があまり口に合わなかったことです。手術の影響もあるのか一口食べてはもどしてしまうひどい状態でした。結局デザートのゼリーやヨーグルトだけ食べていました。2つ目は眠れなかったことです。病院は夜になると幽霊が出ると父親から聞いていたので怖くて眠れませんでした。幽霊は見ませんでしたが、夜中中相部屋の子たちのすーすーと立てる寝息をうらやましく感じていました。3つ目は「痛くないからね」と念を押されたにも関わらず、相当痛かったことです。手術が終わった後はあまりの痛さに歩くことすら出来ませんでした。退院後も痛みは続き暫くものを食べられませんでした。先生に痛い、と訴えたのですが「大丈夫、大丈夫」と笑顔で言われたのが少し悔しかったです。

数年間は手術した箇所が痛みました。長い入院生活の中、病気と闘う人達のドキュメンタリーなどを見ると頭が下がる思いです。私もいい大人ですが、入院生活に耐えられる気がしません。

5歳にして貴重な体験をしました。お陰様であれ以来一度も入院することなく健康に生きているので、当時治療して下さった医療関係者さんや支えてくれた家族には感謝しています。小さな体で病気と闘っている子供たちがたくさんいるのを知ることができ、健康な体で過ごすことができる大切さを学びました。