娘が小学生だったとき、大腿骨を折って手術入院をしました。用水路の蓋が開いていて、遊んでいたときにそこに落ちたのです。底に水が少しあるだけでしたが、深さ1mほどの穴に落ち、泣いているところを通行人に助け上げられました。一緒に遊んでいたお友達が走って知らせにきてくれたときは、いつものようにただ転んで泣いているのだと思ったのですが、現場に行ってみてびっくり、娘の脚がくの字に曲がっているのです。慌ててちょうど家にいた夫に電話をし、すぐに病院に連れて行きました。

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救急外来に駆け込み、ますはレントゲンを撮ってもらいました。レントゲンを撮るために足を少し伸ばす必要があり、怖がって泣き叫ぶ娘の足をスタッフの方が持ってくださり、レントゲン撮影をしました。写真を見るまでもなくやはりぽっきりと折れており、そのまま金属で固定する手術をすることになりました。折れた骨を金属とボルトで固定し、6ヶ月後にもう一度金属を取り外す手術をすると説明していただいたのですが、ただでさえ動転して手術怖いと泣き続けている娘に、2回手術をするとはどうしても言えませんでした。また、部分麻酔では子供の場合、怖がって動いてしまうと危険だということで、手術室の準備を待って全身麻酔で手術をし、そのまま空いていた個室に入院することになりました。

まず驚いたのは、あんなに手術を怖がっていた娘が、終わったあとは淡々としていたことです。逆に緊張の糸が切れたのか、個室に入って、ふう、とベッド脇の椅子に腰をおろした途端、夫がわあわあと声をあげて泣き始めました。娘の足の包帯を見て涙を流し続ける夫に、娘が「お父さん、落ち着いてよ。手術も終わったし、ちゃんと治るんだから」となぐさめていました。夫が娘のそばから離れないので、私が一度帰宅して、入院中の着替えや必要なものなど揃えてまた病室に戻ったのですが、夫はまだ泣いていて、娘のほうが大人のようになぐさめており、いざとなると女性のほうが強いんだなと思ったのを覚えています。娘をひとりにするのはさすがにどうかと心配になり、病院に許可をとって私が泊まることにしたのですが、帰ればいいのに夫も泊まると言い出しました。じゃあ私は帰ろうかと言うと、今度は娘が私にいてほしいと。結局、狭い病室に親子3人で泊まることになりました。

初日はそうやって静かに過ぎていったのですが・・・困ったのは翌日からです。夫が近くに住む姑に知らせたところ、早速舅と姑がお見舞いに来てくれました。交替で食事に出たりするのに助かったのですが、姑が夫側の親戚中にこのことを連絡してしまったのです。田舎のため、情に厚く結束の堅い夫側の親戚の人たちは、面会時間になるとひっきりなしにお見舞いに訪れるようになりました。

こちらは付き添いの寝不足でふらふらですが、親戚が来てくれているのに寝転ぶわけにもいきません。みなさん心配して来てくださるのでありがたいのですが、まるで接待のような状態に。しかも、娘があまりの人の出入りの多さに神経が高ぶり、頭が痛い、ひとりになりたいとしくしく泣くのです。姑に、娘の状態を話して、お見舞いは退院して落ち着いてからお願いすることにして入院中は辞退したいとお願いしたのですが、姑としても立場があるようで、そのお願いは聞き入れてもらうことはできませんでした。娘は泣いているし、親戚は遠方から来てくださっているしで板ばさみになり、付き添いも重なってかなり疲弊しました。病室にはおもちゃやぬいぐるみなどで溢れて見た目にはにぎやかで楽しそうな部屋になり、看護師さんやお医者さんもおもわず笑ってしまうほどでした。お見舞いの数からも個室で良かったと思いました。